MOOSIC LAB 2018で準グランプリ・男優賞(青木柚)受賞した「暁闇」が全州(チョンジュ)映画祭に招待を受け、韓国へ。金浦空港でバスに乗るなり、モニターで放映されていたのが女の人が首をナイフで傷つけて血が出たまま涙目で何かを訴えているというシーンでザッツ韓流ドラマの洗礼を浴びる。サングラスかけて不機嫌そうな運転手の導きで実に3時間半かけて南下、全州にたどり着いた。東京から西に3時間半というと言えば静岡を超えてもう少しで愛知県、というあたりか?(ちなみにボランティアスタッフ曰く、日本の街で規模感が近いのは「福岡」らしい)

ちなみに全州(チョンジュ)国際映画祭は2000年に始まった映画祭で、今年で20回目。全州は韓国映画発祥の地とも言われ、 釜山映画祭、富川映画祭と合わせて韓国三大映画祭の一つとされている。全州国際映画祭は作家性の強い作品が集まるのが特徴で、アジアを代表するインディペンデント映画祭としても注目を集めている。特設会場となるメイン会場「全州ドーム」を中心に、街角にはカメラマンと録音マンの石像が立っていたり、街並みのあちこちに「映画」を感じた。

左から越後はる香、青木柚、中尾有伽。監督+3人のキャストを招待してくレたのも異例のことらしい!愛。
左から『暁闇』音楽のLOWPOPLTD.、中尾有伽、阿部はりか監督、越後はる香、青木柚)

 今回『暁闇』が招待されたのはワールドシネマスケープ部門で『ムーンライト』のバリー・ジェンキンス監督最新作『ビール・ストリートの恋人たち』などのメジャー映画と並ぶ謎!インディーズ映画ながら堂々の選出となった。映画祭には『少女邂逅』に続きお世話になっているアソシエイトPの前プロデューサーと『暁闇』阿部監督と出演の中尾有伽、青木柚、越後はる香、そしてイギリスから音楽のLOWPOPLTD.も合流。オープニングセレモニーに向かう途中、ふらっと「直井さん!」と現れたのは傑作「きみの鳥はうたえる」の三宅唱監督。レッドカーペットには「おいしい家族」松本穂香、ふくだももこ監督もいてくまもと復興映画祭ぶりにまた再会。オープニングを飾るレッドカーペットに阿部監督たちが登壇したあとのセレモニー中にアーティストによる生演奏があり、謎だな…と思って旅の疲れもあり1、2曲目でうとうとしてたら3曲目がイ・チャンドンの「バーニング」のサントラで興奮。早く言ってくれ!(いや、言ってたんだろうけどね…)

 期間中は暁闇クルーとビビンパ(全州はビビンパ発祥の地らしい)や地元で行列ができるほどの美味し過ぎるサムゲタンとか、地元の人に教えてもらった名店でサムギョプサルを食べたりして、LOWPOPLTD.と阿部はりか監督のパンフレット用の取材。東京とイギリスにいて、言葉にしなくてもどこか分かり合っていて、極めて同じ感覚を持っていると感じる2人。ガンダムで言えばこれニュータイプってやつじゃないか?2日目の夜に全州映画祭の20周年記念パーティーがあって、花火が打ちあがって(木の向こうで見にくかったのだが笑)、僕の目の前に花火見てる中尾さん、青木さん、越後さんがいて「ああ、暁闇じゃん」と思う。花火が始まった後「夢だね」とか、青木くんが越後さんにいたずらっぽく言ってたりしてたけど、夢じゃないからすごいよね、なんて。

CGVのスクリーン1は今回の映画祭の中で最大キャパのシネコン!

全州国際映画祭において最大キャパシティとなるCGVのスクリーン1での2回の舞台挨拶付きの上映チケットがオンラインで発売後すぐに即完となるなど現地での注目も高かった本作は、予想を超えた若い客層を中心に熱心な映画ファンが会場に駆けつけてくれた。上映後に行われたQ&Aは次々と質問が飛び交い「日本の青春映画に対し、ある種誇張されているのではないかと思えるほど暗く陰鬱としたテーマのものが多いような印象を持っているが、日本の10代はそのような社会的な問題を実際に抱えているのか」という質問に阿部監督は「抱えていると思うし、少なくとも『暁闇』において自分の体験から離れたことは一切描いていない。むしろあなたと同様、10代の抱える問題を完全にひとつのモチーフとして切り離して描いている作品に出会うと、とても悲しくなる。」と答えたりした他、キャスト陣へのそれぞれが演じたキャラクターについての質問や、「リリィ・シュシュのすべて」の影響はあるのか(阿部監督的には「LOVE&POP」の影響が強いらしい)とか、LOWPOPLTD.の音楽が逆再生をベースに作られていることにも言及するなど、作品の細かい部分まで鋭い質問が飛び出していた。

イベント後は、全州国際映画祭出品の為に制作されたポストカードを配布&登壇メンバーによるサイン会を実施。現地スタッフも吃驚するほどの長蛇の列が並び、阿部監督、青木柚、中尾有伽、越後はる香、LOWPOPLTD.が長時間に渡り、1人1人の熱い感想や質問に答えていた。(その後エゴサしたところ、韓国の映画の感想や写真投稿はinstagramが主流のよう。)

 そんなこんなで、実にエキサイティングな4日間。楽しく、実り多き体験でした。大学生らしきボランティアスタッフが目立っのだが、後で聞いたところ、全州映画祭は各地の学生の課題?になってるらしく、映画も学業の1つだしある意味国策なんだなあ、やっぱり韓国敵わないなあっていう気持ちに。)映画への愛、知識、興味…映画民度という言葉が適切かはわからないけれど、作家性の強い映画を若い客層や映画好きの人たちが興味津々に熱気を持って迎えてくれる状況って日本では今では東京国際映画祭とかくまもと復興映画祭くらいかもしれない(もちろん「MOOSIC LAB」もそうありたいと思っているが)。韓国の映画の現状と未来は明るいような気がした。それに比べて日本は…白目を剥きなら日本への帰路に着いたのであった…。ぱぱんが、ぱん。

映画『暁闇』は7月にユーロスペースほか全国順次ロードショーを予定。今後の情報にご注目ください!(文=直井卓俊)